竜胆瀉肝湯
【頁内目次】…クリックして下さい。写真は中国の色々。
![]() 肝経湿熱(急性結膜炎・中耳炎・高血圧・陰部掻痒)/肝経湿熱・実火治療の代表方剤/肝火上炎・肝胆湿熱 |
【中国主治】(Chinese Mainly treatment) 一、肝膽實火上炎証。脇痛頭痛、目赤口苦,耳聾耳腫。 二、肝經濕熱下注証。小便淋濁、陰癢陰腫、婦女帶下、舌紅、苔?、脈數。 |
【適応症】尿路系炎症(腎盂炎、膀胱炎、尿道炎)、排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ、膀胱カタル、膣炎、陰部湿疹、子宮内膜炎、陰部痒痛、バルトリン腺炎、陰部掻痒症、睾丸炎、外陰潰瘍、トリコモナス、ベーチェット病、ソケイリンパ腺炎、肝硬変 |
【中国臨床應用】(Mainly treatment) 急性肝炎、急性膽?炎、帶?疱疹、急性盆腔炎、乳腺炎、急性?丸炎、急性腎盂炎、泌尿系感染、急性結膜炎、角膜炎、中耳炎、鼻竇炎、陰道炎。 |
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【中国辨證】(Dialectic) 1)肝膽實火上炎以口苦目赤、頭暈耳鳴為主症。 (2)濕熱下注以口苦尿?、前陰濕癢或帶下?臭,脈弦數為主症。 |
薬は効果(ベネフィット)のみだけでなく副作用(リスク)の可能性もあります。リスクをなるべく抑え、ベネフィットを最大限に引き出すことが大切なのです。薬を使用される方の理解と協力が大いに必要です。 【副作用】(ill effects) 証が合わなかった場合は、構成生薬の地黄、黄ゴン、竜胆の影響により、食欲不振、胃の不快感、吐き気、下痢などが起こることがあります。 |
【注 意】(Remark)
×残念ながら、冷えの強い「寒証」、体の虚弱な「虚証」の方、胃腸が弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい方は、禁忌(きんき)(服用を避ける)です。 |
【妊娠・授乳の注意】![]() |
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証(症状・体質)判定を望む方 |
中医学の証の解説
中医学(漢方)の治療目的は病邪を取り除き、病因を消し去り、陰陽![]() ![]() |
次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。
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【使用目標】 本方剤の適応する使用目標は次のとおりです。 ●丈夫な体質で、冷えはなく、脈にもおなかにも力がある。 ●下腹部の筋肉が緊張し、臓器や陰部に熱感があって、充血、落痛、腫脹がある。 ●排尿時に痛みがある。 ●排尿困難でタラタラと尿が出る。 ●残尿感がある、または頻尿である。 ●帯下(おりもの)がある。 |
【八法】…清法:熱邪を清解することにより裏熱を消除する治法です。 |
【中薬大分類】清熱剤…熱を除去する方剤です。清熱・瀉火・解毒・透熱滋陰などの効能により裏熱を改善する方剤です。 【中薬中分類】清臓脇熱剤…臓腑の熱を除去する方剤です。 |
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【気血津液】…人体の生命を支える要素として、氣(qi)・血(blood)・津液(body fluid)の3つがあります。 ●水液停滞…余分な水があまっている方が使用します。津液の停滞のことで、西洋医学的には細胞内液・組織液・リンパ液などが、主として組織間・消化管内・体腔内に異常に停滞したことを意味します。 中医学では湿・痰飲・水腫と呼ぶのが一般的で、日本では水毒ともいわれます。 |
【気血津・臓腑証】 湿熱(しつねつ)…清熱化湿と清熱利水の薬物を主体にして、消炎・抗菌・産出の抑制・解熱・鎮静および利胆・利尿・止血の作用をもって、湿熱に適しています。また、地黄・当帰などの滋潤性の薬物の配合があって「燥しすぎない」利点もあり、やや慢性に経過して血虚・陰虚の側面があらわれた状態にも使用可能です。 一般には、肝臓・胆のう・胃腸・尿路系・骨盤内・生殖器などの滲出を伴う炎症に用います。 |
【証(病機)】肝胆湿熱下注(かんたんしつねつかちゅう) |
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【中医学効能(治法)】 清肝瀉火・清熱化湿・利水・疏肝 |
【用語の説明】(term)![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
【出典】
(source)![]() 西暦1742年 清時代 『医宗金鑑』 呉謙 →処方使用期間:266年間 |
![]() 竜胆瀉肝湯は、中国の金・元の時代に、補中益気湯をつくったとされる季東垣(りとうえん)の『蘭室秘蔵』(らんしつひぞう)を原典としています。ところが、時代の移り変わりとともに、効果は似ていても構成生薬が異なる同名処方がいくつもつくられました。現在、主に用いられているのは、明時代の名医・薛立斎(せつりつさい)がつくったとされる、『薛氏医案二十四種』に掲載の処方で、「竜苓当沢、梔車地に通じて甘し」などと語呂合わせで覚えられているぐらいです。 |
![]() 少量でありながら主薬となっている竜胆は、苦味健胃薬としてだけではなく、肝臓と胆嚢の消炎・解毒剤としても使われます。特に肝臓は、解毒・分解を担う臓器であるため、竜胆の作用によって機能が強まるとされています。また、腎臓を含む泌尿器・生殖器系の炎症を取り、水分がたまって流れが滞った状態を改善する利湿作用も期待できます。 構成生薬の黄ゴンと山梔子には、ともに消炎・解熱作用があります。当帰と地黄は主に血とかかわり、血に潤い(栄養)を与え、肝臓や腎臓を丈夫にし、木通と沢瀉は主に水とかかわり、尿道や膀胱など、下腹部の水毒と炎症を取り去ります。さらに車前子には、利尿・抗炎症作用があり、下腹部の患部の充血を流して消炎します。これらの生薬が甘草の働きで程良く調和され、体内 で効き目を発揮するのです。 ●病にかかりにくい体をつくる 『万病回春』(まんびょうかいしゅん)には、竜胆瀉肝湯の目標として「肝臓系統の経絡(気・血の流れる道)の湿熱(湿邪と熱邪が合わさって引き起こされる病気)、あるいは副睾丸炎(子どもができなくなる炎症)、便毒(鼠蹟(そけい)リンパ腺炎)、下疳(げかん)(性器にできる伝染病潰瘍)、会陰部(肛門と陰部の間)の腫れものが焼けつくように熱をもってうずく、尿が出にくい、女性の外陰部の炎症でかゆみや痛みがある、男性器の亀頭部が腫れる、または膿の出てきたものを治す」とあります。つまり、泌尿器系や生殖器系の炎症、充血や腫脹、疼痛を伴った鼠残部のリンパ腺、排尿異常などを目標に用いられるというわけです。 竜胆瀉肝湯は、血液の流れにも深くかかわりながら病を治していきます。「肝臓系統の経絡」という表現からも分かるように、腹部の静脈は、門脈(肝門脈)を通って解毒・分解を担う肝臓に入ることから、下腹部での炎症や化膿による熱毒は血液によって肝臓に運ばれて解毒されるわけです。そして、肝臓の解毒作用が弱ければ病は治りにくいということになります。竜胆瀉肝湯は、肝臓の働きを強化し、たとえ抗生物質がなくても病毒を退治して、その上、病にかかりにくい体をつくっていくのです。 |
![]() 竜胆瀉肝湯の目的は、まず肝経湿熱の改善にあります。分かりやすくいえば、肝臓系統の気と血の流れる道で起こる、排尿困難に伴う炎症・発熱を改善することです。 漢方の名医・浅田宗伯の『勿誤薬室方函口訣』(ぶつごやくしつほうかんくけつ)には「湿熱の治療には3つの処方があり、湿熱の上に頭痛がひどく、あるいは目が赤く、耳鳴りがする場合は、小柴胡湯に竜胆と胡黄連(ゴマノハグサ科コオウレンの根茎)を加えるとよい。もし湿熱が表面に出て、陰部に潰瘍性のできものがある場合は、梅毒の慢性化症状に効く九味柴胡湯がよい。もし病毒が下部に流れて横根、毒淋(淋病)、陰触瘡(いんしょくそう)(下疳瘡(げかんそう)の一種)がある場合は、竜胆瀉肝湯が主になる」と書かれています。 |
![]() 当帰の作用は次の通りです。 ●補血作用…血の機能を高め、身体の栄養分を補います。 ●行血作用…子宮を収縮して、瘀血(流れの滞った状態の血液)を排出したり、子宮の痙攣を抑えます。 ●潤腸作用…腸内の水分不足を改善し、便秘に効果を発揮します。 ●調経作用…月経を調節します。 ●鎮静作用…気持ちを静める作用です。 |
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【治療の特徴】 中医学(漢方)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb)を処方した漢方薬を使う」ことです。 生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス(balance)良く循環することが大切だと考えます。 人間の健康は、これら「気」(陽)と「血・津液」(陰)の調和のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。 |
【中薬構成】(herb composition)![]()
竜胆・黄苓・楯子は漢方で潟火薬と言われるもので、炎症をおさめる作用が強く、そのほかの生薬も大部分寒性薬で、この方剤が熱証向きの方剤だということがわかる。また車前子・沢潟・木通という利尿薬を中心に、方剤は湿証向きに構成されており、炎症によって尿が出渋るのを快通させる方剤と見ることができる。当帰・地黄は下腹部の血液循環を促す働きをするものと考えられる。 |
●方 解
本方清肝利濕之力甚強,凡屬肝膽實火上炎或濕熱下注所致之証,津液未傷,體力充足者、均可用此方苦寒直折。方中龍膽草大苦大寒,上瀉肝膽實火,下清下焦濕熱,除濕瀉火兩擅其長;??、梔子苦寒瀉火,助龍膽草瀉肝膽經濕熱,並用澤瀉、木通、車前子、清利濕熱,使肝膽濕熱從小便出;生地、當歸滋養肝血、並防苦寒藥耗傷陰血;柴胡疏暢肝膽之氣,並作為引經藥,甘草調和諸藥。諸藥合用、瀉中有補,疏中有養、使邪去而不傷正。 |
病症・腹診・舌診・脈診について
病症は、この症状に当てはまることがあれば、効く可能性が大きいです。
症例・治例は、クリックして具体的な例をお読み下さい。
腹診は、お腹の切診です。日本漢方でよく使用されます。
舌診は、舌の状態の望診です。証の判定の有効な手段です。
脈診は脈の切診です。脈の速さは、確実に判定できますが、それ以外は難しい技術です。
各説明ボタンをクリックしてお読みください。
●処方名:竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)比較情報 |
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【合方】(複数の漢方薬を合わせた処方) 他剤との効用併用を示します。合方は良効なケースが多いです。 本方の証の方で、さらに次の症状がある方は、合わせて次の方剤を飲むと良く効きます。
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【中国藥方加減】(Dialectic) 1.頭痛眩暈:加菊花、天麻。 2.咯血衄血:加牡丹皮、側柏葉。 3.帶下?臭:加?柏、?苡仁、椿根皮。 4.大便秘結:加大?、芒硝。 5.肝腫?疸:加茵陳、茯苓、川七。 6.急性青光眼:加玄參、羌活。 7.目赤腫痛:加川?、菊花。 8.泌尿系感梁:加?蓄、瞿麥、白茅根、連翹。 |

中医学のベースにあるのが、「陰陽五行説」と呼ばれる思想です。「陰陽論」と「五行説」の2つがいっしょになったものですが、どちらも自然や人体の観察から生まれた哲学的な思考法です。
陰陽論では、自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」の、対立する2つの要素に分けて考えます。陰と陽は相反する性質をもっていますが、一方がどちらかを打ち負かしてしまうことのないように、常にバランスをとりあっています。自然界では、夜は陰で、昼は陽、月は陰で、太陽は陽、水は陰で、火は陽とされます。また、人体では、「五臓」が陰で、「六腑」が陽、背中が陽で、おなかが陰とされます。こうした陰と陽の分類は絶対的なものではなく、比較する相手によって変化します。たとえば、背中とくらべるとおなかは陰ですが、同じおなかでも上のほうは陽で、下のほうは陰となるといった場合です。
五行説では、自然界のさまざまな要素を「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素である「五行」に分けて考えます。これらの5つの要素には、それぞれ特徴的な性質があります。木はまっすぐ上に伸びる性質、火は燃え上がる性質、土は生み育てる性質、金は変化・収縮させる性質、水は下に流れて潤いをあたえる性質があるとされます。
それぞれの性質によって、五行は、お互いに助け合ったり、牽制し合ったりしながら、全体のバランスを保っています。五行が相互に助け合う関係を「相生」といい、牽制し合う関係を「相克」といいます。人体の「五臓」の間にも、こうした相生や相克の関係があり、五行説の考えかたは診断や治療にも生かされています。
