薏苡仁湯
【頁内目次】…クリックして下さい。写真は中国の色々。
(Mainly treatment) 湿脾(腫脹・痺れ(しびれ)・疼痛を呈する関節炎) |
【中国主治】(Chinese Mainly treatment) 一、肢體關節腫脹疼痛,屈伸不利,兼見頭身困重,或腰以下腫痛,常用於漿液性關節炎。 二、風寒濕痺,手足流注疼痛、麻木不仁、難以伸屈、關節煩疼。 |
【適応症】関節痛、筋肉痛、腰痛症、慢性関節リウマチ、筋肉リウマチ、漿液性関節炎、結核性関節炎 |
【中国臨床應用】(Mainly treatment) 風濕性關節炎、類風濕性關節炎,肌肉風濕、肺水腫、肋膜炎、慢性腎炎、?氣 |
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寒湿阻絡 » |
【中国辨證】(Dialectic) (1)痺証偏於濕。 (2)關節腫痛煩疼屈伸不利。 |
薬は効果(ベネフィット)のみだけでなく副作用(リスク)の可能性もあります。リスクをなるべく抑え、ベネフィットを最大限に引き出すことが大切なのです。薬を使用される方の理解と協力が大いに必要です。 【副作用】(ill effects) 証が合わなかった場合には、麻黄の影響によって食欲不振に陥ることがあります。 |
【注 意】(Remark)
×残念ながら、体がひどく弱っている著しい虚証の方、発汗の多い方、胃腸の調子が悪い方は、禁忌(きんき)(服用を避ける)です。 |
【妊娠・授乳の注意】
●妊婦または妊娠の可能性のある人は、使用できない場合があります。 |
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中医学の証の解説
中医学(漢方)の治療目的は病邪を取り除き、病因を消し去り、陰陽(positive and negative principles)のバランス(balance)の乱れを正し、相関する臓腑の生理機能を調和・回復させることです。 中医学(漢方)の特徴は、身体全体を診るということです。 身体全体の調子(バランス)を整え、病気を治していきます。 ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。 このときの身体の状態や体質をあらわすのが証(しょう)(constitution)という概念です。 この考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。 中医学(漢方)の良さは、薬そのものよりも、証にもとづき人を診るという、その考え方にあります。 |
次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。 |
【使用目標】 本方剤の適応する使用目標は次のとおりです。 ●ある程度の体力があり、胃腸も丈夫である。 ●手足の諸関節や筋肉が痛む。その痛みや熱が各所に移動する(関節リウマチ)。 ●患部に腫れや張り、熱感、落痛がある。または、しびれて鈍感になっている。 ●屈伸が困難である。 ●亜急性(急性と慢性の中間)、または'慢性の炎症である。 ●冷え症である。または冷える場所に長時間いることが多い。 |
【中薬大分類】祛湿剤…停滞した水液(湿)を除去する方剤です。 【中薬中分類】祛風勝湿剤…風湿による肢体の痛みを治す方剤です。 |
表寒実(ひょうかんじつ)
…証(体質・症状)が、表証(やや慢性化)、寒証(冷え)、実証(比較的体力充実)、湿証(水分停滞)の方に適応します。
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【気血津液】…人体の生命を支える要素として、氣(qi)・血(blood)・津液(body fluid)の3つがあります。 ●血虚…血が不足している方が使用します。血の濡養(栄養・滋潤)作用の不足による症候で、広義での栄養不良状態に相当します。 皮膚につやがない、爪の色が悪い、頭のふらつき、目がかすむ、しびれ感などの症状を呈します。 ●水液停滞…余分な水があまっている方が使用します。津液の停滞のことで、西洋医学的には細胞内液・組織液・リンパ液などが、主として組織間・消化管内・体腔内に異常に停滞したことを意味します。 中医学では湿・痰飲・水腫と呼ぶのが一般的で、日本では水毒ともいわれます。 |
【証(病機)】風湿痺兼血虚(ふうしつひけんけっきょ) |
【中医学効能(治法)】 通陽利水・活血止痙 |
【用語の説明】(term) 血虚(けっきょ) »…体を栄養する血が不足した状態です。貧血などで栄養成分が不足した状態です。顔色不良、口舌が淡白、爪・毛髪につやがない、ふらつき、視力減退などがあります。 湿痺(しつび) »…体内の余分な水分が原因で起きた手足のしびれのことです。 活血(かっけつ) »…血の流れを良くすることです。 清熱(せいねつ) »…熱をさますことです。身体の内部の熱を冷ますことです。体表の熱の場合は解熱といいます。 利水(りすい) »…利水;腎を温めて、脾を健全にすることです。尿や発汗のことです。 |
【出典】
(source) 西暦1500年 明時代 『明医指掌』 →処方使用期間:508年間 |
●関節や筋肉の腫れや痛みを取る ヨク苡仁湯は、中国・明(みん)の時代に皇甫中(こうほちゅう)という漢方医が編集した指導書『明医指掌』(みんいししょう)を原典とした処方で、日本では古くから知られていました。『明医指掌』には「手足の痛みや熱が移動する(関節リウマチのこと)、疼痛、麻痺不仁(麻痺して自由がきかないこと)などで、屈伸の困難を治す」と書かれています。つまり、リウマチを筆頭に、手足の関節あるいは筋肉に炎症が起こり、痛み、腫れ、熱感があって曲げ伸ばしがつらいといった場合は、ヨク苡仁湯の服用が考えられるのです。 ヨク苡仁湯を構成する7つの生薬には、すべてに鎮痛作用があります。中でも、発汗剤とされる麻黄は、水分代謝の調節作用のある桂枝と組んで発汗作用を高め、主薬であるヨク苡仁がさらにそれを助けます。当帰が血液の循環をスムーズにし、関節や筋肉の炎症を改善へと導いていきます。 ただし、麻黄剤であるヨク苡仁湯の適応証は、中間証〜やや実証で、かつ寒証であることが目安です。自分で来院できる体力の持ち主で、胃腸が丈夫な人でないと、かえって食欲不振に陥ってしまうことがあるので、注意が必要です。 ●リウマチ体質の改善薬として役立つ リウマチというのは、関節や筋肉がこわばる病です。その原因には、感染、外傷、免疫の異常、寒冷の影響などが考えられますが、急速に進歩している現代医学においても、その治療法はまだ解明されていません。裏を返せば、それほど難しい病気だといえるでしょう。 漢方では、リウマチは「風・湿・寒の邪によって起こる体質病」と考えられ、それぞれの邪(毒)を取るのに得意な処方を、証に応じて与えることが目標となっています。しかも、腫れや痛みを和らげるだけでなく、全身の改善を念頭において治療するため、患部の改善と同時に手足の冷え、のぼせ、食欲不振など、リウマチに伴う諸症状も改善します。ひいては、リウマチになりやすい体質そのものを改善していこうとする治療法なのです。 ヨク苡仁湯は、主に水毒(湿・寒)による炎症と考えられるリウマチに有効で、体内の水と血の流れを正常にしていきます。したがって、すでに関節がこわばってしまって動かせないような重病には用いられません。急性、慢性にかかわらず、軽度のリウマチに用いられ、服用を続けていく中で、リウマチにかかりにくい体質に改善していくことが目標のひとつなのです。 |
●スポーツをやめた後の「ひざ痛」も解消 リウマチや関節炎などにかかりやすい人の多くは、寒い地方で生活している、冷える場所で仕事をしているなど、「冷え」で水毒をため込むことがいちばんの原因と考えられます。しかし、実際はそれだけではないのです。 学生時代にスポーツを行っていた人が、社会人になって突然スポーツをやめてしまうと、失敗したダイエットのリバウンドのように太ってしまうことがあります。ジワジワと太ってくるので、初めは気にならないのですが、増えた体重は徐々にひざに負担をかけます。加えてスポーツをやめたことで筋力が低下するため、気づくと「ひざが痛い」となるのです。 そのため、就職などでスポーツをやめるときは、いきなりやめるのではなく、軽い運動でよいので、なるべく体を動かすことを続けてください。それでもひざが痛くなった場合には、ヨク苡仁湯で痛みを取り、体質改善を図りましょう。ほうっておくと、ひざがこわばってしまい、大変危険です。 |
左の写真は当帰の花です。 当帰の作用は次の通りです。 ●補血作用…血の機能を高め、身体の栄養分を補います。 ●行血作用…子宮を収縮して、瘀血(流れの滞った状態の血液)を排出したり、子宮の痙攣を抑えます。 ●潤腸作用…腸内の水分不足を改善し、便秘に効果を発揮します。 ●調経作用…月経を調節します。 ●鎮静作用…気持ちを静める作用です。 |
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【治療の特徴】 中医学(漢方)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb)を処方した漢方薬を使う」ことです。 生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス(balance)良く循環することが大切だと考えます。 人間の健康は、これら「気」(陽)と「血・津液」(陰)の調和のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。 |
【中薬構成】(herb composition)
麻黄湯から杏仁を除いて、当帰以下を加えたものです。 |
●方 解
經曰:「風、寒、濕三氣雜至,合而為痺」。 本方係由麻?加朮湯去杏仁,加入當歸、芍藥所組成的。方中?苡仁甘淡微寒,健脾利水,?濕除痺為君;麻?、桂枝辛?解表,?風散寒止痛為臣;蒼朮辛?燥濕,又助?風散寒;當歸、芍藥養血和血,緩急止痛,又含有治風先治血之意為佐;生薑辛?散寒,?風解表,健胃以晏Z力;炙甘草調和諸藥為使,與芍藥相配,酸甘化陰,可防麻桂之辛散,又搖ノ急止痛之功。 共奏?經散寒,?濕止痛之功。 |
病症・腹診・舌診・脈診について
病症は、この症状に当てはまることがあれば、効く可能性が大きいです。
症例・治例は、クリックして具体的な例をお読み下さい。
腹診は、お腹の切診です。日本漢方でよく使用されます。
舌診は、舌の状態の望診です。証の判定の有効な手段です。
脈診は脈の切診です。脈の速さは、確実に判定できますが、それ以外は難しい技術です。
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●処方名:薏苡仁湯(よくいにんとう)比較情報 |
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【合方】(複数の漢方薬を合わせた処方) 他剤との効用併用を示します。合方は良効なケースが多いです。 本方の証の方で、さらに次の症状がある方は、合わせて次の方剤を飲むと良く効きます。
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【中国藥方加減】(Dialectic) 1.煩熱疼痛:加?柏、知母。 2.畏寒痛甚:加附子、地龍。 3.濕盛腫甚:加防己、桃仁、茯苓。 |
中医学のベースにあるのが、「陰陽五行説」と呼ばれる思想です。「陰陽論」と「五行説」の2つがいっしょになったものですが、どちらも自然や人体の観察から生まれた哲学的な思考法です。
陰陽論では、自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」の、対立する2つの要素に分けて考えます。陰と陽は相反する性質をもっていますが、一方がどちらかを打ち負かしてしまうことのないように、常にバランスをとりあっています。自然界では、夜は陰で、昼は陽、月は陰で、太陽は陽、水は陰で、火は陽とされます。また、人体では、「五臓」が陰で、「六腑」が陽、背中が陽で、おなかが陰とされます。こうした陰と陽の分類は絶対的なものではなく、比較する相手によって変化します。たとえば、背中とくらべるとおなかは陰ですが、同じおなかでも上のほうは陽で、下のほうは陰となるといった場合です。
五行説では、自然界のさまざまな要素を「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素である「五行」に分けて考えます。これらの5つの要素には、それぞれ特徴的な性質があります。木はまっすぐ上に伸びる性質、火は燃え上がる性質、土は生み育てる性質、金は変化・収縮させる性質、水は下に流れて潤いをあたえる性質があるとされます。
それぞれの性質によって、五行は、お互いに助け合ったり、牽制し合ったりしながら、全体のバランスを保っています。五行が相互に助け合う関係を「相生」といい、牽制し合う関係を「相克」といいます。人体の「五臓」の間にも、こうした相生や相克の関係があり、五行説の考えかたは診断や治療にも生かされています。