釣藤散
【頁内目次】…クリックして下さい。写真は中国の色々。
![]() 高血圧症・脳動脈硬化症/肝陽上亢/肝陽化風 |
【中国主治】(Chinese Mainly treatment) 肝經熱厥、頭暈目眩、胸膈脹痛、胸悶氣鬱、煩熱躁?,或卒然拘攣,眼目翻騰,身熱足冷或吐利。 |
【適応症】高血圧症、脳血管障害後遺症、頭痛、神経症、めまい、肩こり、更年期障害、動脈硬化、メニエール症候群。 |
【中国臨床應用】(Mainly treatment) 高血壓、偏頭痛、神經官能症、梅尼爾氏綜合症、肩胛?痛、更年期綜合症、動脈硬化症。 |
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【中国辨證】(Dialectic) (1)肝陽偏亢。 (2)眩暈頭痛。 (3)煩熱躁?。 (4)脈弦有力。 |
薬は効果(ベネフィット)のみだけでなく副作用(リスク)の可能性もあります。リスクをなるべく抑え、ベネフィットを最大限に引き出すことが大切なのです。薬を使用される方の理解と協力が大いに必要です。 【副作用】(ill effects) 胃腸の弱い方は、吐き気、食欲不振などの症状を起こすことがあります。 |
【注 意】(Remark)
×残念ながら、胃腸の弱い方、寒証(冷え)の方は、禁忌(きんき)(服用を避ける)です。 |
【妊娠・授乳の注意】![]() ●妊婦または妊娠の可能性のある人は、使用できない場合があります。 |
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証(症状・体質)判定を望む方 |
中医学の証の解説
中医学(漢方)の治療目的は病邪を取り除き、病因を消し去り、陰陽![]() ![]() |
次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。
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【使用目標】 本方剤の適応する使用目標は次のとおりです。 ●慢性的な頭痛が、起床時に寝床で起こる、あるいは午前中に起こる(特に中年以降で高血圧の傾向がある場合)。 ●気分が重く、めまい、耳鳴り、肩こりなどがある。 ●神経質で、眠りが浅いか、不眠がちである。 ●目のかすみや充血がある。 ●肌がかさかさしている。 |
【中薬大分類】治風剤…風(ふう)の邪による失調を治す方剤です。即ち、外風を疏散したり、内風を平熄する効能をもち、風病を改善する方剤です。 【中薬中分類】平熄(そく)内風剤…体内に発生した内風を治す方剤です。内風は「身中陽気の変化」で、熱盛により肝陽が亢盛になって化風したり、陰血不足のために肝陽偏亢になって動風を生じるもので、肝陽の偏亢に続発してひきおこされる「風うちより生ず」の病変です。 |
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【気血津液】…人体の生命を支える要素として、氣(qi)・血(blood)・津液(body fluid)の3つがあります。 ●気虚…氣が不足している方が使用します。氣の作用の不足で、全身の機能・代謝・抵抗力の低下や興奮性の低下などに伴う症候を現します。 疲れやすい、元気が無い、活力低下などを特徴とします。 ●水液停滞…余分な水があまっている方が使用します。津液の停滞のことで、西洋医学的には細胞内液・組織液・リンパ液などが、主として組織間・消化管内・体腔内に異常に停滞したことを意味します。 中医学では湿・痰飲・水腫と呼ぶのが一般的で、日本では水毒ともいわれます。 |
【証(病機)】肝陽上亢兼痰飲(かんようじょうこうけんたんいん) |
【中医学効能(治法)】 平肝潜陽・明目・補気健脾・化痰・熄風・滋陰 |
【用語の説明】(term)![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
【出典】
(source)![]() 西暦1800年 日本時代 『本朝経験方』 →処方使用期間:208年間 |
![]() 釣藤散は、中国でまとめられた『類証普済本事方』(るいしょうふさいほんじほう)(『本事方』と略される)という書物に記載されている処方です。中高年の頭痛の薬として広く知られ、高血圧、動脈硬化症といった血管の老化に伴う諸症状に有効な漢方薬です。 釣藤散を用いる目安となる頭痛は、たいていそれほど激しいものではなく、頭重といわれるような、頭の重だるい違和感も対象です。特に、朝、目が覚めたときから午前中にかけて起こり、日中活動しているといつの間にか忘れてしまうというような症状が典型的です。 釣藤散の対象となる頭痛には、眩暈(めまい)、耳鳴りや、不眠、夜間尿などを伴う場合が多くあります。また、頭痛がなくても、めまい、耳鳴り、不眠などには有効です。釣藤散が合うのは、中年過ぎで、やや神経質な傾向があり、のぼせがちな人です。更年期障害や、自律神経失調症によって、同様の神経症状が出ている場合も対象になります。 ●動脈硬化に伴う頭部の症状に効く 釣藤散は、眼精疲労、眼圧の上昇や、メニエール症候群の治療にも用いられることがあります。 例えば最近、緑内障(眼球の内圧=眼圧が異常に高くなる病気)の増加が問題になっていますが、釣藤散は、一部の緑内障に有効です。頭痛があり、血圧とともに眼圧が高くなるといった場合が対象で、服用していると、眼圧が安定するケースが見られます。また、慢性の眼精疲労に悩まされていて、肩こり、めまい、耳鳴りなどがあり、高血圧気味の人にも、釣藤散がよく効く場合があります。 激しいめまいや耳鳴り、吐き気などに襲われるメニエール病も、治療の難しい病気ですが、中年以降で、動脈硬化や神経症と関係があるケースでは、釣藤散が選択肢の1つになります。疲れやすくて、首や肩がこる、いつも気分が優れずイライラしやすい、目の充血や、朝起きるときの頭痛があるといった方に用います。 高血圧や動脈硬化が原因となって、肩、後頸部から上の部位に症状が出ている場合に、幅広く効果を発揮するのが、釣藤散だといえるでしょう。 ●物忘れやうっかりミスが解消することも 釣藤散は、高血圧や動脈硬化に有効な処方で、脳血管障害に起因する老人性痴呆症(いわゆるボケ)の進行を抑えてくれる、といった特長を持っています。病院で検査を受けて、脳梗塞(脳の血管が詰まる脳卒中の一種)が起こっていると診断されたような方が、釣藤散を服用すると、脳の機能回復が促されるケースが多くあります。 中年期以降で比較的高齢の人向きという印象がありますが、証が合えば40代前後の人にも用いられます。例えば、よく物忘れをするようになった、あるいはうっかりミスが増えたというのも、年のせいとばかりはいえません。高血圧気味で、肩こりや早朝の頭痛がある場合、釣藤散の服用によって、ミスが減ることも多いです。 |
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【治療の特徴】 中医学(漢方)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb)を処方した漢方薬を使う」ことです。 生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス(balance)良く循環することが大切だと考えます。 人間の健康は、これら「気」(陽)と「血・津液」(陰)の調和のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。 |
【中薬構成】(herb composition)![]()
白虎加人参湯から知母と糧米を去って、半夏以下を加えたものと見ることができます。 |
●方 解
經云”無風不作眩”、”無肝不作眩”,肝為剛臟,體陰而用陽,肝陰不足,肝陽偏亢,化風上擾,則作眩暈。 方中鉤藤平肝清熱,菊花甘微寒微苦,輕清浮散,平肝熄風以助鉤藤平肝之力;防風辛?而潤,助?風之功;石膏辛寒,清熱降火,肝風常易挾痰、陳皮、半夏同用健脾燥濕化痰,以杜生痰之源;麥冬養陰安神;茯神寧心安神;人參、茯苓補氣健脾化濕;生薑、甘草調和脾胃,共奏平肝清熱安神之功。 |
病症・腹診・舌診・脈診について
病症は、この症状に当てはまることがあれば、効く可能性が大きいです。
症例・治例は、クリックして具体的な例をお読み下さい。
腹診は、お腹の切診です。日本漢方でよく使用されます。
舌診は、舌の状態の望診です。証の判定の有効な手段です。
脈診は脈の切診です。脈の速さは、確実に判定できますが、それ以外は難しい技術です。
各説明ボタンをクリックしてお読みください。
●処方名:釣藤散(ちょうとうさん)比較情報 |
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【中国藥方加減】(Dialectic) 1.肝陽亢盛(血壓偏高):加天麻、牛膝、石決明、??、梔子。 2.痰濁較盛:加天麻、白朮、澤瀉。 3.頭痛甚:加川?、葛根、蒿本。 |

中医学のベースにあるのが、「陰陽五行説」と呼ばれる思想です。「陰陽論」と「五行説」の2つがいっしょになったものですが、どちらも自然や人体の観察から生まれた哲学的な思考法です。
陰陽論では、自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」の、対立する2つの要素に分けて考えます。陰と陽は相反する性質をもっていますが、一方がどちらかを打ち負かしてしまうことのないように、常にバランスをとりあっています。自然界では、夜は陰で、昼は陽、月は陰で、太陽は陽、水は陰で、火は陽とされます。また、人体では、「五臓」が陰で、「六腑」が陽、背中が陽で、おなかが陰とされます。こうした陰と陽の分類は絶対的なものではなく、比較する相手によって変化します。たとえば、背中とくらべるとおなかは陰ですが、同じおなかでも上のほうは陽で、下のほうは陰となるといった場合です。
五行説では、自然界のさまざまな要素を「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素である「五行」に分けて考えます。これらの5つの要素には、それぞれ特徴的な性質があります。木はまっすぐ上に伸びる性質、火は燃え上がる性質、土は生み育てる性質、金は変化・収縮させる性質、水は下に流れて潤いをあたえる性質があるとされます。
それぞれの性質によって、五行は、お互いに助け合ったり、牽制し合ったりしながら、全体のバランスを保っています。五行が相互に助け合う関係を「相生」といい、牽制し合う関係を「相克」といいます。人体の「五臓」の間にも、こうした相生や相克の関係があり、五行説の考えかたは診断や治療にも生かされています。
