処方名治打撲一方処方名

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  主治(Mainly treatment)
打撲、捻挫(ねんざ)、関節炎の腫れや痛み  
  【適応症】打撲、捻挫  
 
中医師 漢方・中医学(Traditional Chinese Medicine)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb) »を処方した漢方薬を使う」ことです。
生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液(blood)」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス良く循環することが大切だと考えます。
人間の健康は、これら「気」(陽)「血・津液」(陰)の調和(harmony)のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和(陰平陽秘)していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。
黄帝:三皇五帝時代。夏王朝の始祖。宮廷医師、岐伯との問答形式で記された古典的医学書「内経 »素問」の著者です。日本ではユンケル「ユンケル黄帝液」などと商品名に利用されています。
 
  弁証論治 リンク血瘀(瘀血) »
 
  薬は効果(ベネフィット)のみだけでなく副作用(リスク)の可能性もあります。リスクをなるべく抑え、ベネフィットを最大限に引き出すことが大切なのです。薬を使用される方の理解と協力が大いに必要です。
【副作用】(ill effects)
証が合わなかった場合には、大黄の影響で軟便、または下痢になることがあります。服用量を調節しましょう。  
  【注 意】(Remark) ×残念ながら、体がひどく弱っている「著しい虚証」の方、胃腸が弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい方、軟便や下痢をしている方は、禁忌(きんき)(服用を避ける)です。
 
  【妊娠・授乳の注意】女性 ●大黄により、流早産の危険性があります。
●授乳中は、乳児が下痢をする場合がありますので、使用には注意が必要です。
 
 
  証の判定 判定

証(症状・体質)判定を望む方判定の方右矢印 陰陽(太極図)証の判定メニュー画面へ »
※この判定のために、AI(人工知能)のエキスパート・システムを構築しました。Java

 

中医学の証の解説中医学の証の解説

  中医学(漢方)の治療目的は病邪を取り除き、病因を消し去り、陰陽陰陽(positive and negative principles)のバランス(balance)の乱れを正し、相関する臓腑の生理機能を調和・回復させることです。 中医師 中医学(漢方)の特徴は、身体全体を診るということです。 身体全体の調子(バランス)を整え、病気を治していきます。 ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。 このときの身体の状態や体質をあらわすのが(しょう)(constitution)という概念です。 この考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。 中医学(漢方)の良さは、薬そのものよりも、証にもとづき人を診るという、その考え方にあります。  
  次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。 治打撲一方 朱雀:四神の獣・南方の守護神  
 
【使用目標】
本方剤の適応する使用目標は次のとおりです。
●打撲やねじったりすることで起こる腫れや痛み。
●打撲やねんざをして1〜2日経過している(患部の粗熱が引いている)。
●打撲後のあざがなかなか消えない。
●数年、あるいは数十年たってから、打撲やねんざの後遺症として痛みが起こる(この場合は附子を加えて用いられる)。
 
  【中薬大分類】理血剤…血の運行を調節する方剤です。理血薬を主体にして血分を調理し、血分の病変を改善する方剤です。
【中薬中分類】活血化瘀剤…滞った血(瘀血)を流す方剤です。蓄血・血瘀による疼痛・腫脹・腫瘤・半身不随・月経痛・無月経あるいは産後の悪露停滞・化膿症初期・狂躁などのさまざまな病変に使用します。  
  八綱分類裏熱(寒)虚(りねつ(かん)きょ) 裏 熱 熱 寒 寒 虚 …証(体質・症状)は、一応裏証(内臓)、虚証(虚弱)の方に適応しますが、この方剤は、たいていの、どの証にも対応します。

 
  【気血津液】…人体の生命を支える要素として、氣(qi)・血(blood)・津液(body fluid)の3つがあります。
気滞…氣の働きがうまくいっていない方が使用します。氣の循環に停滞をきたした病態です。もっとも気滞に関連が深いのは内傷七情(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)と呼ばれる精神的ストレスで、「病は気から」と認識されているものです。 内傷七情は情緒系・自律神経系に影響して肝気欝結と呼ばれる抑うつ緊張の状態などを生じさせ、これに伴って各部位の気滞を引き起こします。
血瘀…血の流れが悪い方が使用します。停滞し変性した非生理的血液の意味で、現代西洋医学的には微小循環系の障害が最も血瘀に近い病態と考えられます。 大まかには静脈系の停滞即ち鬱血に相当しますが、血液粘稠度の増大、凝固亢進、血栓、癒着、繊維化、増殖性病変、瘢痕、血腫などの様々な病態が含まれます。 また、紫斑・皮下点状出血や血管内の凝血(凍瘡など)、DICのような血管内凝固亢進にひき続く出血も血瘀と判断されています。
 
 
 
  【証(病機)】気滞実熱打撲・腫脹疼痛(きたいじつねつだぼく・しゅちょうとうつう)  
  【中医学効能(治法)】 活血化淡・消腫・通陽  
  【用語の説明】(term)
リンク活血(かっけつ) »…血の流れを良くすることです。
リンク消腫(しょうしゅ) »…腫れ(はれ)、腫れ物を消すことです。
リンク気滞(きたい) »…気の流れが滞っている状態です。気が滞ると脹痛、膨満感などが現れます。肝の機能低下、風邪、飲食、水毒、オ血などが原因の機能低下などです。
リンク実熱(じつねつ) »…外からの熱邪の侵襲、ストレス、飲食の不摂生による熱の発生などの症候です。(実火)
リンク疼痛(とうつう) »…ずきずき痛むことです。「うずき」です。
 
  【出典】 (source)出典書籍
西暦1800年 日本時代 『本朝経験方』  →処方使用期間:208年間  
  打撲患部を冷やした後に用いる

打撲は、昔から打ち身といわれ、何かにぶつかった、転落した、転倒した、などというときに起こります。また、ねんざは関節が本来動ける範囲を超えて曲げられたり、伸ばされたりしたとき、関節を支えている組織(靭帯や関節包など)に損傷が起こった状態です。治打撲一方は、こうした打ち身やねんざの腫れ、痛みを、より早く治すために用いられます。ただし、治打撲一方の薬の性質は温性ですから、用いるタイミングが重要です。
例えば打撲した直後は、患部の皮膚下に流れる毛細血管が切れ(内出血状態)、それを修復しようとそこに血液が集まってくるため、痛みとともに患部は熱をおびて腫れてきます。したがって、最初は冷やすことが何より重要です。症状によっても異なりますが、通常1〜2日間はしっかり冷やし、2〜3日後から治打撲一方を服用するとよいでしょう。
治打撲一方は、各種婦人科系疾患にも広く用いられ、「血を和す」と表現される血剤の川骨と、「骨落(骨の痛み)を去る」といわれている撲漱を主薬としています。
そこに体を温め、血流促進作用がある桂枝と丁子が加わり、全体で温性の駆瘀血剤を構成しています。つまり、冷やすことで滞ってしまった血液の流れをもとどおりにし、血栓をつくることなく修復してくれるのです。


古傷が再度痛み出した場合には附子を加える

治打撲一方は、もともとは江戸時代の京都の漢方医・香川修庵が著した『医事説約』に掲載されている日本でつくられた漢方薬です。
その本の中に「久しきものは附子を加える」というくだりがあります。若いころに打撲やねんざを起こし、その後10年以上経ってから再び痛み出したという例はよくあります。ここでいう「久しきもの」とは古傷を指し、数年前、もしくは数十年前の後遺症が現れた場合、または慢性化して長引いている場合に「治打撲一方に附子を加えて用いなさい」と述べているのです。
血管拡張・肝機能増進作用のある附子が加えられることで、体内を温め、手足の冷えや水分代謝を正常に戻し、長い間ほうっておかれた患部を完治させるのです。


 
  発毛髪の発毛・青毛にも効果がみられた治打撲一方

それは、東京に大雪が降り積もった年のことでした。50歳代の女性が雪上を歩いていて転んでしまい、手を打撲してしまいました。病院に通っても痛みが取れなかったので、漢方の専門家を訪ねたところ、治打撲一方を勧められたのです。
痛みは、10日間ほど飲むと治ったそうですが、しばらくして「あの薬をもう一度ください」と女性が再び訪ねてきました。専門家が「今度はどこを打撲したのですか」とたずねると、「あの薬を飲んでいると髪の毛が生えてきたんです」と言うのです。髪の毛は女性ホルモンに左右されるといわれていますが、50代に入ると更年期障害や閉経など、ホルモンバランスが崩れるため、髪の毛の成長にも悪影響を及ぼします。加えて寒い季節だったため、冷えの影響もあり、彼女は瘀血状態になっていたと考えられます。そのため、病院に通っても打撲の痛みがなかなか取れなかったのです。
このケースは、温めて瘀血を改善する治打撲一方が、血行を促し、患部の痛みを取るだけでなく、冷えも解消しながら全身のバランスを調えた結果、髪が生えてきたと思われます。西洋薬とは異なる、体全体を調整する漢方薬の力といえるでしょう。


 
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  【治療の特徴】
中医学(漢方)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb)を処方した漢方薬を使う」ことです。
生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス(balance)良く循環することが大切だと考えます。
人間の健康は、これら「気」(陽)と「血・津液」(陰)の調和のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。  
  【中薬構成】(herb composition)
神農

発散薬と収敵薬を上手に組み合わせて、打撲後の治癒を促進する目的でつくられた方剤と見ることができます。
桂枝・甘草の組み合わせば桂枝湯の基本構造で、これに芍薬の代りに、活血・鎮痛作用のある川葛と、健胃・駆風作用のある丁香が加えられて、発散・鎮痛効果を万全たらしめています。
一方、止血作用のある川骨、消炎作用と排瀉作用のある大黄は、撲漱と共に収斂作用をもっており、打撲による腫れと痛みを・一面において発散させつつ、収斂し止血する効を兼ねたものと考えられます。
桂枝・川骨・丁香いずれにも健胃作用があり、打撲時に用いられる西洋薬が、とかく胃腸障害を伴いやすいことを考えれば、安心して使える打撲症用薬です。



神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。  

病症・腹診・舌診・脈診病症・腹診・舌診・脈診について

  病症は、この症状に当てはまることがあれば、効く可能性が大きいです。 症例・治例は、クリックして具体的な例をお読み下さい。 腹診は、お腹の切診です。日本漢方でよく使用されます。 舌診は、舌の状態の望診です。証の判定の有効な手段です。 脈診は脈の切診です。脈の速さは、確実に判定できますが、それ以外は難しい技術です。 各説明ボタンをクリックしてお読みください。 ●処方名:治打撲一方(ちだぼくいっぽう)比較情報
 
 
【病症】(symptoms) 次の病症どれかのある方に本処方は適合します。 ●打撲による腫れや痛み
●脉証や腹証はあまり考慮しなくてよい
足跡【治打撲一方】の症例・治例 »
腹診【腹診】(abdomen) 不定です。
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舌診【舌診】(tongue) 乾湿中間、時に帯紫色で微白苔です。
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脈診【脈診】(pulse) 沈渋、時に弦です。
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  【合方】(複数の漢方薬を合わせた処方)
他剤との効用併用を示します。合方は良効なケースが多いです。
本方の証の方で、さらに次の症状がある方は、合わせて次の方剤を飲むと良く効きます。
病症症状 合方 備考
古傷の再度の痛みの場合 治打撲一方+附子 »
 

陰陽五行論 陰陽五行説
中医学のベースにあるのが、「陰陽五行説」と呼ばれる思想です。「陰陽論」と「五行説」の2つがいっしょになったものですが、どちらも自然や人体の観察から生まれた哲学的な思考法です。
陰陽論では、自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」の、対立する2つの要素に分けて考えます。陰と陽は相反する性質をもっていますが、一方がどちらかを打ち負かしてしまうことのないように、常にバランスをとりあっています。自然界では、夜は陰で、昼は陽、月は陰で、太陽は陽、水は陰で、火は陽とされます。また、人体では、「五臓」が陰で、「六腑」が陽、背中が陽で、おなかが陰とされます。こうした陰と陽の分類は絶対的なものではなく、比較する相手によって変化します。たとえば、背中とくらべるとおなかは陰ですが、同じおなかでも上のほうは陽で、下のほうは陰となるといった場合です。
五行説では、自然界のさまざまな要素を「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素である「五行」に分けて考えます。これらの5つの要素には、それぞれ特徴的な性質があります。木はまっすぐ上に伸びる性質、火は燃え上がる性質、土は生み育てる性質、金は変化・収縮させる性質、水は下に流れて潤いをあたえる性質があるとされます。
それぞれの性質によって、五行は、お互いに助け合ったり、牽制し合ったりしながら、全体のバランスを保っています。五行が相互に助け合う関係を「相生」といい、牽制し合う関係を「相克」といいます。人体の「五臓」の間にも、こうした相生や相克の関係があり、五行説の考えかたは診断や治療にも生かされています。

区切り
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