処方名十全大補湯処方名

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  主治(Mainly treatment)
わずかな陽気を伴う気血両虚証・疲れると横になりたい方  
  【中国主治】(Chinese Mainly treatment)
諸?百損、頭暈目眩、消?納呆、足膝無力等諸?弱證。  
  【適応症】病後・産後の衰弱、自律神経失調症、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血、消耗性疾患あるいは手術による衰弱、産後衰弱、低血圧症、神経衰弱、胃腸虚弱、胃下垂、白血病、癌、悪液質、脱肛、子宮出血、痔瘻、腎結核、カリエス  
  【中国臨床應用】(Mainly treatment)
一、貧血、病後或術後衰弱之調理。 二、各種出血、癰疽、痔瘻、骨疽、骨結核、腎結核、瘰癧、白血病、夢精、帶下、視力減退、凍傷、癌症輔助治療、經閉、?氣、皮膚病、梅尼爾氏症候群、耳疾等。  
 
中医師 漢方・中医学(Traditional Chinese Medicine)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb) »を処方した漢方薬を使う」ことです。
生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液(blood)」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス良く循環することが大切だと考えます。
人間の健康は、これら「気」(陽)「血・津液」(陰)の調和(harmony)のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和(陰平陽秘)していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。
黄帝:三皇五帝時代。夏王朝の始祖。宮廷医師、岐伯との問答形式で記された古典的医学書「内経 »素問」の著者です。日本ではユンケル「ユンケル黄帝液」などと商品名に利用されています。
 
  弁証論治 リンク気血両虚(気血不足) »
リンク心陰虚 »
リンク中気下陥(脾気下陥) »
リンク脾不統血(気不摂血) »
 
  【中国辨證】(Dialectic)
(1)面色蒼白萎?。 (2)眩暈。 (3)消?。 (4)納呆。 (5)脈?無力。  
  薬は効果(ベネフィット)のみだけでなく副作用(リスク)の可能性もあります。リスクをなるべく抑え、ベネフィットを最大限に引き出すことが大切なのです。薬を使用される方の理解と協力が大いに必要です。
【副作用】(ill effects)
証が合わなかった場合には、下痢(泄瀉)や嘔吐、食欲不振、発熱などが現れる場合があります。また、服用前から、すでに下痢(泄瀉)や嘔吐、食欲不振がひどい場合には使用しないでください。  
  【注 意】(Remark) ×残念ながら、吐き気、嘔吐や下痢(泄瀉)など、胃腸の弱っている方は、禁忌(きんき)(服用を避ける)です。
 
  【妊娠・授乳の注意】女性 ●妊娠中の貧血の場合によく使用されます。
●妊婦または妊娠の可能性のある人は、使用できない場合があります。
 
 
  証の判定 判定

証(症状・体質)判定を望む方判定の方右矢印 陰陽(太極図)証の判定メニュー画面へ »
※この判定のために、AI(人工知能)のエキスパート・システムを構築しました。Java

 

中医学の証の解説中医学の証の解説

  中医学(漢方)の治療目的は病邪を取り除き、病因を消し去り、陰陽陰陽(positive and negative principles)のバランス(balance)の乱れを正し、相関する臓腑の生理機能を調和・回復させることです。 中医師 中医学(漢方)の特徴は、身体全体を診るということです。 身体全体の調子(バランス)を整え、病気を治していきます。 ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。 このときの身体の状態や体質をあらわすのが(しょう)(constitution)という概念です。 この考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。 中医学(漢方)の良さは、薬そのものよりも、証にもとづき人を診るという、その考え方にあります。  
  次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。 十全大補湯 朱雀:四神の獣・南方の守護神  
 
【使用目標】
本方剤の適応する使用目標は次のとおりです。
●気力も体力も衰えている(全身衰弱)。
●貧血傾向である。
●食欲不振でやつれている、またはやせている。
●皮膚に潤いやつやがない。
●脈や腹部に力がない。
 
  【八法】…補法:気血陰陽あるいは臓腑の虚損を補養する治法です。
 
  【中薬大分類】補益剤…正気を補う方剤です。補益薬を主体にして正気の不足である虚証を改善する方剤です。扶正剤・補剤ともいいます。
【中薬中分類】気血双補剤…気血を同時に補う方剤です。気虚と血虚がほぼ同等に存在する気血両虚に使用します。  
  八綱分類裏寒虚(りかんきょ) 裏 寒 寒 虚 …証(体質・症状)が、裏証(慢性症状)、寒証(冷え)、虚証(虚弱)、血虚(血流不足・貧血症状)、気虚(心身疲労)の方に適応します。

 
  【気血津液】…人体の生命を支える要素として、氣(qi)・血(blood)・津液(body fluid)の3つがあります。
気虚…氣が不足している方が使用します。氣の作用の不足で、全身の機能・代謝・抵抗力の低下や興奮性の低下などに伴う症候を現します。 疲れやすい、元気が無い、活力低下などを特徴とします。
血虚…血が不足している方が使用します。血の濡養(栄養・滋潤)作用の不足による症候で、広義での栄養不良状態に相当します。 皮膚につやがない、爪の色が悪い、頭のふらつき、目がかすむ、しびれ感などの症状を呈します。
 
 
  【気血津・臓腑証】
気血両虚(きけつりょうきょ)…四君子湯と四物湯を合わせた八珍湯に、補気の黄耆と補陽散寒の桂皮を配合したもので、補気を主体にしたうえで補血を行う配合になっています。
桂皮は温める目的でもありますが、血行を促進して当帰・川弓の活血の効能を助長し、さらに消化吸収を強める効果を狙ったものと考えると良いです。
 
 
  【証(病機)】気血両虚(きけつりょうきょ)  
  【中医学効能(治法)】 気血双補・温陽祛寒・補気・養血・補陽  
  【用語の説明】(term)
リンク気血双補剤(きけつそうほざい) »…補気剤と補血剤の構成を合方したものになります。ただし、血虚は多くの場合気虚に不随して発生するので、気血双補剤の主体は補気にあります。
リンク温陽(おんよう) »…温める力を補充することです。
リンク気血両虚(きけつりょうきょ) »…気と血が両方不足した状態。気の力で血が生成されるため、気が不足すると血も不足しやすいです。
 
  【出典】 (source)出典書籍
西暦1247年 元時代 『医学発明』 李東垣 →処方使用期間:761年間  
  十全大補湯八珍湯の効き目をさらに強化
十全大補湯を構成する10種類の生薬のうち、当帰、川キュウ、芍薬、地黄(熟地黄)の4つは、血の生成や流れなどを全般的に補う「四物湯」と同じ構成生薬です。また、人参、白朮、茯苓、甘草の4つは補気剤であり、かつ水毒にも働く「四君子湯」の基本生薬となっています。この8つの生薬を合わせると「八珍湯」という処方になります。
八珍湯は、気・血・水すべてに働き、体力と気力を回復させる効力に優れています。しかし、八珍湯の目標となっている症状がもう少し重い人に向けて、その効き目をさらに強化するため、気・血のめぐりを助ける桂枝と、水の偏在を取り除く黄蓍の2つを加えた十全大補湯が生まれたのです。
十全大補湯は、虚証の人の体力低下、疲労の元凶である慢性疾患、病後・手術後などの回復を、強力にしかも穏やかにサポートしてくれます。
外科医も手術後に使っている十全大補湯
元来は元気な人でも、かかった病気が長期間治らない、あるいは、けがで動くことができないようだと、体力はいつの間にか低下していき、全身が衰弱してしまいます。それに伴い、貧血に悩まされる、食欲不振に陥ってガリガリにやせる、皮膚に潤いやつやがなく乾燥している、脈や腹部に力がない、というような場合には十全大補湯を試してみるとよいでしょう。
大病後や手術後、産後などは特に体が衰弱しています。十全大補湯を服用することで、血液の生成が促され、流れも正常に整えられるので、あらゆる貧血が改善されていきます。また、食欲が出てきて体力が回復するとともに、健康的に太れるようにもなるので、やがて気力も復活するのです。
こうして現在では、西洋医学の外科でも、体力回復の機能向上薬として十全大補湯が使用されるようになっています。
「漢方で分からなかったら十全大補湯を用いよ」といわれるのが大げさでないぐらい、病気と闘う力のない人の常備薬として活躍してくれることでしょう。
 
  対応疾患 十全大補湯は多くの疾患に応用されます。
1.病後の回復期など、疲労・衰弱を目標に応用します。四物湯が配合されることから、血虚の症状が見られます。とくに皮膚の枯燥と消痩は、重要です。ただ、疲労倦怠感だけならば、気虚であり、補中益気湯の適応です。それに対して、ゲソッという感じが見られるならば、血虚をかねており、十全大補湯の適応です。
産後、外科手術後、高熱後、慢性下痢(泄瀉)症治癒後、出血後の回復期などです。
●とくにこれといった疾患がなくとも、上記の症状を呈する人はいます。
たとえば、痩せていて太れない人、いわゆる虚弱体質者などです。これらの方にも、十全大補湯は適応します。
●いわゆる貧血症に適応します。
●糖尿病。
2.虚弱者や病後の腰痛に適応します。
足腰が弱く、しくしくと痛む。疲れると、発症あるいは加重します。
3.手足のしびれや無力に適応します。ポリオの後遺症などです。
4.頭痛やめまいです。疲れると発症あるいは加重します。
5.月経時の諸症に適応します。
●月経時に、頭痛する。
●月経時に、眩暈(めまい)する。
●月経時に、全身が痛みしびれ、脱力感をともなう。
6.妊娠中の虚弱や衰弱に適応します。
●妊娠後期、めまいして、とくに動くと加重する。
●栄養状態が悪く、胎児の発育がよくない。
7.産後の体力を回復させます。
●産後、全身の関節が痛み、だるくしびれる。
●乳汁の出が悪い。乳汁が薄く、乳房がはってこない。
●乳汁が漏れる。やはり、乳汁が薄く、乳房がはらない。
●体力が回復せず、なかなか月経が来ない。
●産後の腰痛。
8.子宮脱にも、十全大補湯の適応があります。
9.癰疽(ようそ)などが潰えた後、肉芽が形成されず、薄い膿が出てやまないもの。
 
  当帰の作用 左の写真は当帰の花です。
当帰の作用は次の通りです。
補血作用血の機能を高め、身体の栄養分を補います。
行血作用…子宮を収縮して、瘀血(流れの滞った状態の血液)を排出したり、子宮の痙攣を抑えます。
潤腸作用腸内の水分不足を改善し、便秘に効果を発揮します。
調経作用…月経を調節します。
鎮静作用気持ちを静める作用です。
 
   同じ処方の別製品の一覧を見たい場合は、次をクリックして下さい。 十全大補湯・製品集 »
 
  【治療の特徴】
中医学(漢方)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb)を処方した漢方薬を使う」ことです。
生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス(balance)良く循環することが大切だと考えます。
人間の健康は、これら「気」(陽)と「血・津液」(陰)の調和のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。  

中薬(成分生薬)中薬(成分生薬)の解説

 
十全大補湯の中薬一覧(herb list)
生薬名(herb name) 薬量(quantity) 君臣佐使(role) 効能1 効能2 効能3 効能4 大分類 中分類
黄耆 » 3 佐薬 補気健脾 生肌 固表 補虚薬 補気薬
人参 » 3 君薬 補気健脾 補虚薬 補気薬
白朮 » 3 臣薬 補気健脾 補虚薬 補気薬
茯苓 » 3 佐薬 補気健脾 利水滲湿薬
炙甘草 » 1.5 使薬 補気健脾
熟地黄 » 3 臣薬 補血 補虚薬 補血薬
白芍 » 3 佐薬 補血
当帰 » 3 君薬 補血 活血 生肌 補虚薬 補血薬
川芎 » 3 使薬 活血 活血化瘀薬(理血薬)
桂皮 » 3 佐薬 補陽散寒 解表剤 辛温解表薬
君薬…方剤配合中の主薬で、症状に対して主に作用する薬物です。
臣薬…主薬を補助して主薬の効き目を強化する薬物です。
佐薬…主薬に協力して二次的な症状を取り除くか、または主薬を制御し、主薬による副作用を抑えるか防ぐ薬物です。
使薬…方剤の中では二次的な薬物か、引経(薬物を病のある場所まで引率していく作用)の薬物です。
 
  1.人参・黄耆・白朮・茯苓・甘草(炙甘草)は、全身の機能を高め代謝を促進し、消化吸収を強め、元気をつけ疲労感を除き抵抗力を増す(補気健脾)。また、たんぱく合成・造血・免疫能増強に働く。
2.白朮・茯苓は、組織中や消化管内の余剰水分を血中に引き込んで利尿によって除く(利水)。
3.熟地黄・当帰・芍薬は、全身を栄養・滋潤し、神経機能や内分泌機能を正常化する(補血)。
4.当帰・川芎は、血管拡張により循環を改善し、栄養物の分配・供給を強める(活血)。
5.桂皮は、血管拡張により内臓や末梢の循環を強めて体を温め(温中散寒)+唾液・胃液の分泌を高めて消化吸収を補助する(理気)。
6.黄耆・当帰は、肉芽形成を促進する(生肌)。
(補足)
本方は、補気の基本処方「四君子湯」と補血の基本処方「四物湯」を組み合わせ、補気の黄耆と温虫散寒の桂皮を加えたものに相当し、「気血双補」の処方になっている。すなわち、機能面・物質面の消耗に対して用いる。
 
  【中薬構成】(herb composition)
神農

当帰から熟地黄までは四物湯、人参から甘草までは四君子湯(普通は生姜・大棗の組み合わせを加えますが、本来は四つだけで四君子)で、この二つを合わせたものを八珍湯と言いますが、これにさらに桂枝と黄耆を加えたものが十全大補湯です。
四物湯は血虚(貧血)を治し、四君子湯は気虚(元気の衰え)を治す方剤で、これに補性で升性、すなわち強壮作用のある桂枝と黄耆が加わっているので、気血両虚を治す大補剤と言うことができます。
構成生薬の大半が温性であるから、むろん寒証向きで、やや燥証向きです。ことに熟地黄が入っているので食欲不振や下痢(泄瀉)のある 方には不向きです。

以上をまとめると、補気の基本方剤である四君子湯に、補血の基本方剤である四物湯を合方した八珍湯に、肉桂と黄耆を加えたものにあたります。
したがって、気血両虚の病態に適応します。 黄耆を加え、補気作用を増強します。肉桂が加わり、補陽に作用します。
そこで、気血両虚の寒証に適応します。
また、地黄・肉桂の組合せのあることから、腎虚を補う作用もあります。

神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。  

 
●方 解
方中參、苓、白朮、草為四君?益氣補中,健脾養胃之央A是治療脾胃氣?、運化乏力之方;歸、?、芍、地為四物?補血調經之效,有補而不滯,活?而不破之央A加?耆補氣升陽,固表止汗;肉桂?補命門,填補真元。
 

病症・腹診・舌診・脈診病症・腹診・舌診・脈診について

  病症は、この症状に当てはまることがあれば、効く可能性が大きいです。 症例・治例は、クリックして具体的な例をお読み下さい。 腹診は、お腹の切診です。日本漢方でよく使用されます。 舌診は、舌の状態の望診です。証の判定の有効な手段です。 脈診は脈の切診です。脈の速さは、確実に判定できますが、それ以外は難しい技術です。 各説明ボタンをクリックしてお読みください。 ●処方名:十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)比較情報
 
 
【病症】(symptoms) 次の病症どれかのある方に本処方は適合します。 ●慢性病などで全身(気血ともに)が衰弱。
●貧血。
●食欲不振。
●盗汗(ねあせ)、自然発汗。
●手足が冷える。
●下痢(泄瀉)。
足跡【十全大補湯】の症例・治例 »
腹診【腹診】(abdomen) 腹壁軟弱で力が無く、暖かい手で触ると気持ちが良いです。
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舌診【舌診】(tongue) 湿潤で微白苔あるいは無苔です。
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脈診【脈診】(pulse) 沈細あるいは微弱です。
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  【中国藥方加減】(Dialectic)
1.納呆:加砂仁、山?。 2.骨節疼痛:加牛膝、續斷。 3.失眠多夢:加酸棗仁、夜交藤。 4.夢遺:加五味子、山茱萸、山藥、麥冬。 5.心?驚悸:合養心湯。 6.脾?體倦:合歸脾湯。  
陰陽五行論 陰陽五行説
中医学のベースにあるのが、「陰陽五行説」と呼ばれる思想です。「陰陽論」と「五行説」の2つがいっしょになったものですが、どちらも自然や人体の観察から生まれた哲学的な思考法です。
陰陽論では、自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」の、対立する2つの要素に分けて考えます。陰と陽は相反する性質をもっていますが、一方がどちらかを打ち負かしてしまうことのないように、常にバランスをとりあっています。自然界では、夜は陰で、昼は陽、月は陰で、太陽は陽、水は陰で、火は陽とされます。また、人体では、「五臓」が陰で、「六腑」が陽、背中が陽で、おなかが陰とされます。こうした陰と陽の分類は絶対的なものではなく、比較する相手によって変化します。たとえば、背中とくらべるとおなかは陰ですが、同じおなかでも上のほうは陽で、下のほうは陰となるといった場合です。
五行説では、自然界のさまざまな要素を「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素である「五行」に分けて考えます。これらの5つの要素には、それぞれ特徴的な性質があります。木はまっすぐ上に伸びる性質、火は燃え上がる性質、土は生み育てる性質、金は変化・収縮させる性質、水は下に流れて潤いをあたえる性質があるとされます。
それぞれの性質によって、五行は、お互いに助け合ったり、牽制し合ったりしながら、全体のバランスを保っています。五行が相互に助け合う関係を「相生」といい、牽制し合う関係を「相克」といいます。人体の「五臓」の間にも、こうした相生や相克の関係があり、五行説の考えかたは診断や治療にも生かされています。

区切り
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