帰脾湯
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(Mainly treatment) 心の気血両虚の動悸・倦怠・不眠/心脾気血両虚を治療する名方剤/脾不統血による出血 |
【中国主治】(Chinese Mainly treatment) 一、心脾氣血兩?証。心悸??健忘失眠、盜汗?熱,食少体倦、面色萎?,舌淡、苔白薄,脈細緩。 二、脾不統血証。便血、皮下紫癜,婦女崩漏,月經超前,量多色淡或淋漓不止或帶下。 |
【適応症】貧血、不眠症、不安神経症、胃潰瘍、腸出血、子宮出血、血尿、食欲不振、神経性心悸亢進症、健忘症、神経衰弱、ヒステリー、白血病、再生不良性貧血、バンチ氏病、遺精、嚢腫腎、瘰癧(るいれき)の潰瘍、慢性淋疾 |
【中国臨床應用】(Mainly treatment) 心悸、消化道出血、功能性子宮出血、貧血及再生障礙性貧血,血小板減少性紫癜、神經衰弱、心臟病、更年期綜合症。原因不明出血、月經不調、帶下崩漏、白血病、遺精、陽萎。 |
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血虚 » 出血・気虚(気不摂血・脾不統血) » 気血両虚(気血不足) » 気虚失血 » 心血虚 » 心気血両虚 » 脾不統血(気不摂血) » 心腎不交(心火+腎陰虚) » 心脾気血両虚(心血虚+脾気虚) » 気虚 » |
【中国辨證】(Dialectic) (1)心悸??、失眠健忘。 (2)食少倦怠面色萎?。 (3)舌淡苔白。 (4)脈細弱。 |
【妊娠・授乳の注意】
●妊婦または妊娠の可能性のある人は、使用できない場合があります。 |
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中医学の証の解説
中医学(漢方)の治療目的は病邪を取り除き、病因を消し去り、陰陽(positive and negative principles)のバランス(balance)の乱れを正し、相関する臓腑の生理機能を調和・回復させることです。 中医学(漢方)の特徴は、身体全体を診るということです。 身体全体の調子(バランス)を整え、病気を治していきます。 ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。 このときの身体の状態や体質をあらわすのが証(しょう)(constitution)という概念です。 この考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。 中医学(漢方)の良さは、薬そのものよりも、証にもとづき人を診るという、その考え方にあります。 |
次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。 |
【八法】…補法:気血陰陽あるいは臓腑の虚損を補養する治法です。 |
【中薬大分類】補益剤…正気を補う方剤です。補益薬を主体にして正気の不足である虚証を改善する方剤です。扶正剤・補剤ともいいます。 【中薬中分類】補血剤…血を補う方剤です。血虚に対する方剤です。養血剤ともいいます。 |
裏寒虚(りかんきょ)
…証(体質・症状)が、裏証(慢性症状)、寒証(冷え)、虚証(虚弱)、血虚(血流不足・貧血症状)、気虚(心身疲労)の方に適応します。
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【気血津液】…人体の生命を支える要素として、氣(qi)・血(blood)・津液(body fluid)の3つがあります。 ●気虚…氣が不足している方が使用します。氣の作用の不足で、全身の機能・代謝・抵抗力の低下や興奮性の低下などに伴う症候を現します。 疲れやすい、元気が無い、活力低下などを特徴とします。 ●血虚…血が不足している方が使用します。血の濡養(栄養・滋潤)作用の不足による症候で、広義での栄養不良状態に相当します。 皮膚につやがない、爪の色が悪い、頭のふらつき、目がかすむ、しびれ感などの症状を呈します。 |
【証(病機)】心脾両虚(しんぴりょうきょ) |
【中医学効能(治法)】 気血双補・補脾・養心安神・補養心脾 |
【用語の説明】(term) 気血双補剤(きけつそうほざい) »…補気剤と補血剤の構成を合方したものになります。ただし、血虚は多くの場合気虚に不随して発生するので、気血双補剤の主体は補気にあります。 補脾(ほひ) »…脾の機能を高めることです。 養心安神法(ようしんあんじんほう) »…心の陰血が不足して起こる心神不安の治療法です。 心脾両虚(しんぴりょうきょ) »…心と脾の機能が同時に落ちた状態です。食欲不振や不眠が起ります。 |
【出典】
(source) 西暦1253年 宋時代 『済生方』 厳用和 →処方使用期間:755年間 |
【備 考】
(remarks) 帰脾湯は、『済生方』という処方集が原典とされています。『済生方』は中国南宋時代の漢方医・厳用和によって編纂されたため、正式には『厳氏済生方』といい、厳氏が試用して有効だった450余りの処方が選録されているものです。 ところが、そこに紹介されている帰脾湯の構成生薬は、実は12種類でなく、当帰と遠志が入っておらず、10種類だったといわれています。そして、後に明の時代の医者であった醇立斉によって、当帰と遠志が加えられ、現在の帰脾湯の基本となる処方がつくられたのだそうです。 |
●低下した造血・消化機能を改善 帰脾湯は、顔色が悪く、貧血気味で、精神不安、動悸、健忘(もの忘れ)があり、熟睡できない、寝汗や熱が出る、あるいは、手足がだるくて疲れやすく寝てばかりいる、便秘がある、などの症状がみられる場合に用いられます。このような人は、もともと虚弱体質気味で、病後や産後のように著しく体力が低下している場合が多く、自分とは関係ないことまで心配したり、各種の異常出血が起こったり、特に女性の場合は月経不順の傾向があったりします。 これらの症状は、考えごとが多すぎて脾を痛め、脾気(脾を機能させる気)も衰えて食欲が落ち、心臓や肝臓の血液を調節できなくなるために起こる、と考えられてきました。漢方でいう脾は全身の血液を統括する臓器であり、造血および消化機能に関連すると考えられています。それが気の影響によって貧血や消化機能の低下につながり、体のあちこちで症状を引き起こす原因になります。現代医学的にいえば、精神身体反応の一種と考えられる状態です。この状態を改善し、脾と脾気を正常な状態に戻し(帰し)ていくのが帰脾湯なのです。 |
左の写真は当帰の花です。 当帰の作用は次の通りです。 ●補血作用…血の機能を高め、身体の栄養分を補います。 ●行血作用…子宮を収縮して、瘀血(流れの滞った状態の血液)を排出したり、子宮の痙攣を抑えます。 ●潤腸作用…腸内の水分不足を改善し、便秘に効果を発揮します。 ●調経作用…月経を調節します。 ●鎮静作用…気持ちを静める作用です。 |
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【治療の特徴】 中医学(漢方)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb)を処方した漢方薬を使う」ことです。 生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス(balance)良く循環することが大切だと考えます。 人間の健康は、これら「気」(陽)と「血・津液」(陰)の調和のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。 |
【中薬構成】(herb composition)
四君子湯に酸裏仁以下を加えたものです。酸棗仁・竜眼・遠志はいずれも降性で、鎮静・催眠作用があり、木香には理気・健胃作用があります。当帰と竜眼には貧血を治す作用があり、さらに黄耆には強壮作用があります。これらの作用が四君子湯の作用に加わったものと思えばよいです。 |
●方 解
本方通用於思慮過度、勞傷心脾所致之氣血不足常用方劑。方中?耆、人參、白朮、甘草益氣補脾;當歸、龍眼肉補血養心;茯神、酸棗仁、遠志、寧心安神;木香理氣醒脾,使補而不滯、薑棗調和脾胃。諸藥合用,可使心脾同治,氣血兼顧,則心得所養,血統於脾諸証漸癒。 |
病症・腹診・舌診・脈診について
病症は、この症状に当てはまることがあれば、効く可能性が大きいです。
症例・治例は、クリックして具体的な例をお読み下さい。
腹診は、お腹の切診です。日本漢方でよく使用されます。
舌診は、舌の状態の望診です。証の判定の有効な手段です。
脈診は脈の切診です。脈の速さは、確実に判定できますが、それ以外は難しい技術です。
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●処方名:帰脾湯(きひとう)比較情報 |
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【中国藥方加減】(Dialectic) 1.發熱:加柴胡、梔子。 2.補血止血:加熟地、阿膠。 3.驚悸不眠:加夜鉤藤、柏子仁、龍骨、牡?。 4.崩漏不止:加K地?、阿膠。 5.咳嗽:加紫?、桔梗。 6.心臟衰弱:加五味子、麥冬。 7.咳血:加大小薊、藕節、仙鶴草。 8.子宮出血:加阿膠、艾葉、白芍。 9.再生障礙性貧血:加補骨脂、枸杞、鹿茸。 |
中医学のベースにあるのが、「陰陽五行説」と呼ばれる思想です。「陰陽論」と「五行説」の2つがいっしょになったものですが、どちらも自然や人体の観察から生まれた哲学的な思考法です。
陰陽論では、自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」の、対立する2つの要素に分けて考えます。陰と陽は相反する性質をもっていますが、一方がどちらかを打ち負かしてしまうことのないように、常にバランスをとりあっています。自然界では、夜は陰で、昼は陽、月は陰で、太陽は陽、水は陰で、火は陽とされます。また、人体では、「五臓」が陰で、「六腑」が陽、背中が陽で、おなかが陰とされます。こうした陰と陽の分類は絶対的なものではなく、比較する相手によって変化します。たとえば、背中とくらべるとおなかは陰ですが、同じおなかでも上のほうは陽で、下のほうは陰となるといった場合です。
五行説では、自然界のさまざまな要素を「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素である「五行」に分けて考えます。これらの5つの要素には、それぞれ特徴的な性質があります。木はまっすぐ上に伸びる性質、火は燃え上がる性質、土は生み育てる性質、金は変化・収縮させる性質、水は下に流れて潤いをあたえる性質があるとされます。
それぞれの性質によって、五行は、お互いに助け合ったり、牽制し合ったりしながら、全体のバランスを保っています。五行が相互に助け合う関係を「相生」といい、牽制し合う関係を「相克」といいます。人体の「五臓」の間にも、こうした相生や相克の関係があり、五行説の考えかたは診断や治療にも生かされています。